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天国に咲く花 <桃と天国の花>(七)


 さらに五年の月日が流れた。

 村に残る家は、とうとう桃の家だけになってしまった。雄一と冴子も心配して、度々家族会議が開かれた。

「おばあさんから後を継いだと言っても、周りの状況がこうも変わってしまっては、このままというのはもう無理じゃない?」

冴子が言った。

「そうは言ってもなあ、私たちはあの花のおかげでこうして幸せになれたわけだし」

雄一が言った。

「じゃ、いっそ、その花にどうしていいか聞いてみたらどうかな」

潤が言った

「そうね、聞いてみようかしら、でも、今の私は困り人かしら……」

桃が言った。

 

 一週間後、考えに考えた末、桃は花畑に向かった。

 そこにはのどかな春の陽射しの中、堂々と一輪の花が輝いていた。桃は目を閉じ、その花に向かって静かに頭を下げた。まず最初に、今までの感謝を述べた。そして、これからの自分の行く道を尋ねた。

 

 

 すると、しばらくして耳元で波の音が聞こえてきた。驚いて目を開けると、桃はいつのまにか波が打ち寄せる浜辺に立っていた。見渡すと岸壁の先に白い灯台が目に入った。

(おばあさんが話してくれた光景だわ)

 灯台の灯りが海を照らした瞬間、なんと海に道が出来た! そして、はるかかなたには花畑が…… 桃がその道を歩いていくと、花畑の中に老婆が立っていた。

「桃、久しぶりじゃのう。元気そうじゃな。

 お前はほんにようやってくれた。もう十分じゃよ。

 次の満月の晩、海を見においで。山はもう、たーんと見たでな」

 そう言うと、老婆は笑顔とともに消えていき、桃は気を失った。

 

 

 気がつくと、桃はいつもの花畑で倒れていた。

(私、夢を見ていたのかしら)

 すぐそばでは、天国の花がまだきれいな花を咲かせていた。

 


by mirror-lake | 2018-09-03 14:06 | 『天国に咲く花』

ささやかな楽しみで書いている物語。   誰かの心に染みてくれることを願って……

by 鏡湖